国際平和美術展への出展作品に込めた想い

 

結環 -Yuimawari-
国際平和美術展への出展作品に込めた想い


 

 

 国際平和美術展へ

 


 

2025年の秋、一通のオファーが届きました。

 

国際平和美術展への出展のお誘い。

以前から、海外への出展に挑戦したいと思っていため、胸が高鳴りました。

 

展示会場のひとつは、スペインのバルセロナ。

いつか必ず訪れたいと思っていた場所。

その地に、自分の作品が渡る。

 

 

「やってみよう。」

 

 

迷いより先に、気づいたら、決めていました。

 

 

2026年6月に金沢21世紀美術館のギャラリーで

展示され、9月にはバルセロナへ。

 

ひとつの作品が、ふたつの場所に渡ります。

 

 

芸術が人を癒す場所へ

 

バルセロナでの展示会場は、サンパウ病院今は博物館となった世界遺産です。

 

「芸術には人を癒す力がある」

 

そう信じた建築家ルイス・ドメネクによって設計されたこの病院は、

モザイクタイルやステンドグラス、

陶器で美しく装飾された病棟が広大な敷地に並ぶ、まるで、夢の中のような建物。

 

 

1997年にはカタルーニャ音楽堂ともに世界遺産に登録されています。

 

 

ジュエリーという装飾品の枠を超えて、アートとして表現したかった今回の作品。

 

この病院の歴史と深い親和性を感じました。

 

 

そして、オープニングパーティーが開かれるのは、カサミラ。

 

バルセロナという街そのものが、この作品の舞台になっていきます。

 

 

ガウディの想いに触れて

 

展示会のテーマは、「平和」。

 

「さて、どこから始めようか。」

 

 

縁あってバロセロナという土地に作品が飾られるのなら、バロセロナのことを知りたい。

 

 

そう思ったとき、自然と向かったのは図書館でした。

 

バルセロナといえば、「サグラダ・ファミリア」があります。

その建築家であるアントニ・ガウディ。

 

 

彼の建築、思想、哲学、そして生涯。

ページをめくるうちに、ある記述に目が止まりました。

 

幼少期のガウディはリウマチを患い、病弱で、他の子どもたちと同じように遊ぶことができなかった。

 

だから、自然観察をして過ごしたという。

 

その「自然」という存在が、彼に大きなインスピレーションを与えた。

 

 

サグラダ・ファミリアの聖堂にある36本の柱は、まるで樹木のように

上部が枝分かれし、天井には殉教のシンボルである

シュロの葉のモチーフが飾られています。

 

 

自然の中に宿る美しさ、

そして、

人間も自然の一部として共に生きるということ。

 

病弱だったひとりの少年が、

自然を観察し続けることで生み出した世界。

 

 

この話を読んだとき、こころが震えました。

 

私が天然石に魅了されるのも、まさに同じ理由だったから。

 

地球が何億年もかけて育んだ石の中に、

 

自然の美しさと神秘的な構造を感じていたからです。

 

 

「これをジュエリーで表現したい。」

 

そのイメージが膨らんでいきました。

 

 

もがいた時間

 

花や葉のモチーフを使ったデザインを、何度も試みました。

 

頭の中にあるイメージは鮮明なのに、手が追いつかない。

 

つくっては止まり、止まってはつくる。

 

 

かならず、形になるという確信はあったものの

でも、何をどうすればいいのか、本当に止まってしまった。

 

「どうしよう...」

 

焦りと、制作したいという気持ちが混ざり合って、

夢にまで出てくるようになっていました。

 

 

提出期限が迫る中、このまま続けても前には進めない。

そう感じたとき、思い切って、一度手放すことにしました。

 

 

途中まで作っていたものを、全部やめる。

気持ちをまっさらにしよう。

 

 

そう思って、何気なく石の在庫整理をはじめたのです。

 

 

石が、待っていた

 

そのとき、ふと目に止まった石があった。

 

ハーキマーダイヤモンドの原石。

アメリカ・ニューヨーク州で産出する水晶で、両剣に結晶した珍しい形を持つ石です。

 

原石にも関わらず、その透明度と美しさから

ダイヤモンドに間違われた逸話もあるほどの水晶です。

 

 

縦5センチ近く、透明度が高く、内側の細かなクラックが虹色に光っていた。

手にした瞬間、世界が変わるような感覚がした。

 

 

「これだ。」

 

 

石が光って見えるような瞬間だった。

 

言葉にするなら、石が「私を使って」と伝えてくれているような感じに近い。

 

 

実は、この石は数年の間に何度かお客様に選ばれそうになったけど

でも、そうならなかった。

 

石には、意志がある。

きっと、このときのために待っていてくれたのだと感じました。

 

 

私はハーキマーダイヤモンドを「バンジージャンプの石」と呼んでいます。

 

バンジージャンプをする直前、飛ぶ前が一番怖い。

 

でも、飛んでしまえば、新しい世界へと入っていくことに身を委ねるしかない。

迷いや不安、恐れを飛び越えて、踏み出す勇気と自分の中の光を引き出す。

 

そんな石だと思っています。

 

 

長い間もがいていたのに、この石を手にした瞬間、すっと手放せた。

あの葛藤が、嘘のようでした。

 

この石を中心に使おう。

 

それだけがはっきりと、わかりました。

 

一気に、手が動きはじめる

 

ハーキマーダイヤモンドを手にしてから、制作の流れが変わりました。

それまでのもがきが、嘘のように手が動き始めた。

 

気がつくと、円状のパーツをいくつも作っていたんです。

 

なぜそうなるのか、説明がつかないまま手が動いていました。

 

作りながら、わかってきた。

この円を、繋げていくんだ。

 

 

DNAをイメージした螺旋の着想がやってきて、

色とりどりの石たちを配置するイメージも生まれた。

 

最初からそう決めていたわけじゃなくて

作っているうちに、どんどんとイメージがやってくる。

 

まるで石や、もっと大きな何かと一緒に作っているような感覚でした。

 

 

全てのパーツが円で繋がるデザインになったとき、

「命が巡る」という言葉が頭の中にやってきました。

 

0.5mmに満たないワイヤーで

 

ただ、制作は決して簡単ではありませんでした。

 

頭の中には設計図があります。

 

でも、それを手で形にする方法は、作りながら探していくしかない。

どうやったら形になるのかわからないまま、試行錯誤しながら進んでいきました。

 

使ったのは直径0.5mmにも満たないシルバーフィルドワイヤーです。

 

それをよったり、捻ったり、束ねたりしながら、一本一本、手で形を作っていきました。

気が遠くなるような手間と時間がかかる作業が続きます。

 

それでも手が止まらなかったのは、ハーキマーダイヤモンドがインスピレーションを与え、教えてくれていたからだと思っています。

 

あの瞬間から、流れが変わりました。

違いを超えた先にあるもの

 

今年に入り、また戦争が始まりました。

何世紀にもわたって、繰り返されてきた争い。

 

 

だんだんと形になっていく作品を見つめながら、私は思いました。

 

原石も、磨かれた石も、ひとつひとつ違う光を放っている。

けれど、ひとつのジュエリーの中で、互いの美しさを引き立て合っている。

 

人も、きっと同じなのだと。

 

言葉も、文化も、宗教も、肌の色も違う。

それでも私たちは、同じ地球に生きている。

 

目には見えなくても、根っこの部分では繋がっているのだと思うのです。

 

 

中央に置いた、原石のままのハーキマーダイヤモンド。

それは、ありのままの美しさを放つ「地球」そのものを表現したかったから。

 

そして、周囲を彩る磨かれた色とりどりの石たちは、

互いの違いを理解し、尊重し合いながら共に存在する姿を表しています。

 

分離を超えたその先にある、調和の世界。

 

 

それは、私の屋号である「ラブ・シンフォニー」に込めた想い、そのものでもあります。

 

作り終えて

 

完成したとき、まず感じたのは安堵でした。

 

「やっと、出来上がった。」

そんな気持ちが、胸に広がりました。

 

 

けれど同時に、

まだ表現できることがあったのではないか

そんな、後ろ髪を引かれるような感覚も残っていました。

 

 

でも、きっとそれでいいのだと思っています。

 

 

その“余白”が、次の作品へと繋がる種になる。

終わりではなく、新しい創造のはじまりだから。

 

この作品の前に立ったとき、

ただ、あなた自身の中にある光を、感じてもらえたら嬉しいです。

 

 

その光は、すでに、あなたの中に在るものだから。

 

 

 

タイトル「結環 -Yuimawari-」

 

「結」は、繋がること。

「環」は、命が巡ること。

  

私たちの命は、繋がり合い、巡り続けている。

あらゆる分離を超えた先に、調和の世界はある。

 

結び、めぐる——結環 -Yuimawari-